弁護士ブログ

2006.06.18更新

 昨年11月より、全国で刑事裁判では公判前整理手続きという手続きが導入された。
 簡単にいえば、重大事件について裁判の迅速化を図る制度である。
 最近では、堀江ライブドア前社長の裁判で導入が決まったことが報道されたので、名前だけは聞いたことがある人は多いと思う。

 私自身、まだ公判前整理手続きでの刑事弁護の経験がない。しかし、実際にこの制度のもとで刑事弁護を担当した弁護士に話を聞いてみると、被告人の適正な弁護実現のため、自分の事務所経営を維持するため(要するに、私のような個人事務所の弁護士には出来ない制度)には大変危険な制度との認識を持った。
 
 それは、公判前整理手続きは、第1回公判前に裁判所において検察官、弁護人が証拠開示、主張立証事実を明らかにして争点を絞ることがとても大切とされているが、検察官からの全面的な証拠開示がなされないし、強制捜査権がない弁護人側には短期間では十分な証拠収集ができないため、極めて不平等な制度であるし、証人の証言によって有利な証拠がありそうだ、と弁護人が考えてもそれを裁判所に請求するための時間が限られている、とか、証人間の矛盾供述の確認などがおそらくできないし、保釈されていればまだしも身柄拘束中の被告人ともなれば、裁判での結果について打ち合わせをする時間がないに等しいなど、理想がむき出しになったがゆえに現実の刑事弁護の実情を蔑ろにしたものといえなくもない、からである。

 実際、今、私が弁護人をやっている事件では、検察官が証拠を隠しているために、また、共犯の供述や警察官の供述などから、最近まで分からなかった有利な証拠がありそうだ、ということに気がつくことができた。
 これは、公判前整理手続きでは無理だったろう。

 私は、よっぽどのことが無い限り、公判前整理手続きは使うべきではない、と考える。

投稿者: ヒューマンネットワーク三森法律事務所

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