弁護士は、弁護士自治があり、監督官庁を持たない。だから、国や地方自治体を相手にした裁判も抵抗なく出来る。
その代わり、弁護士懲戒制度があり、誰でも弁護士に対して懲戒請求が出来る。懲戒されると、最悪の場合、弁護士資格を失うことになる。そうでなくても、「自由と正義」という弁護士に毎月配布される月刊誌に懲戒情報が掲載され、大変不名誉である。
最近、インターネットでネットサーフィンをしていたら、ある弁護士が某刑事事件の弁護団を構成する弁護士に対して視聴者に懲戒請求を要請するシーンをみた。公共の電波で放送されたもののダイジェスト版であろうと思う。
確かに、私も某弁護団の弁護方針には首を傾げざるをえない。素直に、賛同できない。
そもそも、私は死刑存続論者である。
しかし、賛同できないのは、当該事件の刑事記録を丹念に読んで、自分なりに刑事弁護人としての知見による検討をしていないからであるかもしれない。被告人に会って、意見を聞いていないからかもしれない。
だから、弁護団の弁護方針が正しいのか、間違っているのかについて、弁護士バッチを掛けて議論することができない。
一般人の、素直な感情による「嫌い」「好き」はあり得ても、何も記録を確認しないし被告人、弁護人などの当事者から何も確認しないで「こんな弁護士は懲戒請求をどんどんすべきだ」などと公共の電波を使って呼びかける弁護士とは、一体どういう了見なのだろうか。
この方は、否認刑事弁護をやったことがあるのだろうか。かなり、危うい気がする。
懲戒請求権の濫用は、不法行為になるという最高裁判所判例がある。この弁護士は、一歩間違うと弁護士資格を失うのではないか。