弁護士広告は、完全に自由化された。
だから、いろいろな弁護士がいろいろな媒体に広告を出している。最近では、たいていの法律事務所がホームページを持っているといってもよい状態であろう。
最近、新聞折込広告やタウンページのほか、電車内広告で債務整理専門をうたう法律事務所が多数あることに気が付く。
ある法律事務所は、たまたま私が地方に出張に行った際に聞いたラジオでも広告をしていたので、とても驚いた。この法律事務所は、事務員だけでも100人近くいるらしい。
別に、このことはどうということではない。
問題は、これだけの人件費や広告宣伝費をかけても事務所経営が成り立つということは、月に相当数の新件受任をしている、という現実である。
弁護士には管轄がないから、北海道の依頼者でも九州の依頼者でも、事件受任は可能である。
しかし、弁護士も人間である以上、どうしても処理可能な数というものがある。
債務整理という借金問題をかかえる人は、いろいろな原因を抱えて問題が深刻化している方が多い。
だから、最初の相談時間は少なくとも1時間はしっかりと事情を聴かないと適切な対策が見えないというのが私の持論なのだが、任意理性に特化した事務所の弁護士ははたして依頼者との相談時間をどれだけとっているのだろうか。
だいたい、任意整理の場合、1件あたり平均して5社くらいの債権者がいるから、30人だと150件の交渉相手がいることになる。
私自身、たまたま任意整理案件が大量に集中した時期があったが、このときは30件の同時並行処理が限界だった。
というのも、私は、どんな事件でも基本的に依頼者の「顔、家族構成、年齢、収入」などの個人的データを記憶して仕事をしているため、債務整理の案件は30件以上はこなすことができないと確信するにいたったからである。
当然だが、私は、事務所スタッフには受任通知の郵送、ファイル作成、利息制限法の引き直し計算は頼むが、和解契約書の作成、訴状や準備書面の作成、交渉一切はすべて私が行う。事務所スタッフは、依頼者がいくら債務を負担しているか、などは知らない。
つまり、一人の弁護士当たり月に100件とか200件とかの任意整理を受任している法律事務所は、本当に弁護士が責任をもって依頼者から事情を聞き取り、記録を精査して交渉しているのか、すごく疑問に思うのである。
事務所スタッフをたくさん雇用して事件処理するのはいいのだが、ちゃっとそれらを責任もって監督しているのか、そこらへんにどうしても疑問を持ってしまうのである。
実際に、私が破産管財人として関与した事件の申立代理人が任意整理に特化した事務所の弁護士だったときは、いつも電話しても弁護士はおらず、返電を求めても事務所スタッフからしか電話がなかった。
この法律事務所の弁護士は、普段、何をしていたのだろうか。
民事も刑事も家事事件も何でもできるから、弁護士なのだと私は素直に思うのだが。