弁護士に嘘をつく依頼者は多い。
ここで、「嘘」とは客観的事実と説明との食い違いについて依頼者が認識していることを指す。
どうして依頼者は嘘をつくのか、一度、ゆっくり考えてみた。
かつては、代理人である弁護士に嘘をつくと、結局、自分が不利になる、という実感がないのだろう、と善解した時期もあったが、今はそうは考えていない。
おそらく、私の体験上、①弁護士を信用していない(だって、弁護士は、今まで人間関係がない他人に過ぎないから最初からどこまで本当のことを話せるかわからない)、②人は自分に不利な情報は極力出さないものだ(これが一番多い気がする)、③自分に都合の悪いことを認識していない(これも、多い。この場合、嘘をついているといえるか疑問となる)などの理由があげられる。
私も、依頼者に(間違いなく)嘘をつかれてひやっとしたことが何度もある。
最近も、あった。「そんなこと、聞いてないぞ」
しかし、私は、多分、3年くらい前からは、依頼者に嘘をつかれても、怒らないことにした。
理由は、嘘をつくと依頼者が不利になるが、それは私に責任があるわけではないと割り切ることにしたことと、客観的な証拠との齟齬について冷静に話をすることにより結果的に依頼者が正直に話をしてくれるようになったためである(これは、自分の聴き取り能力が向上したためであろう、と善解しているが)。
いずれにせよ、弁護士は、あくまで依頼者の話を前提に出来る限り真理に近づくように批判的な目をもって事実を見極めつつ、一方で、心はホットに感じつつも頭はクールに保って事件処理にあたることが肝要なのであろう。